鍼灸について
鍼灸と冷え症(冷え性)
人には体を温める力があります。東洋医学ではおへその下、臍下丹田にある三焦の原気とよばれるものが熱の原動力となります。
当院での冷え症の治療は鍼によって下腹部を温めることがメインとなります。
外部からただ熱を加えるのではなく、人がもつ体を温める力を高めることによって冷えを改善していきます。
治療を受けた患者さんからはただ鍼をされただけで体が温かくなるので不思議がられますが、これは鍼で経絡を調整することにより体を温める力を補ったから効果があらわれたのです。
冷え症の主な原因
ここまで東洋医学の観点から冷えを説明しましたが、次は現代医学の観点から冷えを説明します。
①熱を産み出す力の低下
人体の中で熱を産み出す代表的な器官は筋肉です。筋肉が食物中に含まれている栄養分を消費して熱を作り出します。
若い女性などで間違ったダイエットにより栄養が不足したり、運動不足によって筋肉がやせ衰えると熱を産み出す力が低下するので冷えるようになります。
対策としては栄養をしっかり摂り、運動によって筋肉を増やすことです。
②血行障害
熱は血液によって全身に運ばれます。血液は血管の中を流れていますが、この血管の太さを調節しているのが交感神経(自律神経の1つ)です。
交感神経の活動が上昇すると血管は細くなり、血流量は低下します。
通常、寒いときは血管を細くして末端部の血流量を低下させることによって熱を外に逃がさないようにしています。それは大切な内臓を保護するための大切な働きです。
それがストレスなどによって常に交感神経が緊張していたりすると、末端の血管が収縮したままになり、冷えを起こしてしまいます。
はり治療には自律神経のバランスをとる効果があるので、はりで血流を改善することによって冷えをとることができます。
③過剰な熱の放出
②とは逆のパターンで交感神経がうまく働かず、寒いときでも血管が広がったままだと熱がどんどん外に逃げていってしまい冷えを起こします。
また汗は蒸発するときに体の熱をうばっていくので汗をかきやすい人は体が冷えやすくなります。そのため冷えているからといって温めすぎて汗をかくとかえって冷えてしまうので注意が必要です。
そして汗の量を調節しているのも交感神経です。
②と同様にはりによって自律神経のバランスをとることによって血流と汗の量を調節し、熱を逃がさないようにすることができます。
以上3つの原因を挙げましたが、2つ3つの要因がからみあって冷えを起こすので、その人にあった対策が必要になります。
夏の冷房と冷え症(冷え性)
夏の暑い時期、ついつい冷房で体を冷やしていませんか?
確かに冷房の効いた涼しい部屋で過ごすのは気持ちのいいものです。しかし夏に体を冷やしたツケは冬になってきます。
前述のとおり人の熱のエネルギー源は三焦の原気です。この三焦の原気は経絡では腎経と呼ばれるラインとかかわりが深く、この腎経は足の裏の湧泉というツボから始まり、足首の内側に大事なツボがあります。
つまり足首を冷やすと経絡を伝わって下腹部を冷やしてしまいます。
対策としては上記の理由から下腹部と足首を冷やさないこと、冷たい飲食物を摂りすぎないことです。
また足首内側の骨の高まりから3本指横にした幅の高さのところに三陰交というツボがあります。ここは婦人科疾患とかかわりが深く、冷え症にも大事なツボです。
なので三陰交を冷やさないためにも夏場でも長めの靴下をはくことをおすすめします。
身体が冷えると免疫力も低下し、体調を崩しやすくなります。ただの冷えだとあなどらずに早めに対策をしましょう