不眠症の鍼灸治療
不眠症は自律神経やホルモンバランスの乱れにともなってあらわれます。不眠が単独で出現することは少なく、実際には肩がこる、イライラする、胃がもたれる、全身の倦怠感などの不定愁訴の中の1つとして不眠があります。
ですから不眠だけを特別視する必要はなく、鍼灸で体全体の調子を整えていくと、身体が楽になっていくと同時に不眠も改善されていきます。
はりで用いるツボはその人の症状・体質によって変えていきます。基本的には自律神経・ホルモンのバランスを整える目的で、お腹や背中、手、足、頭などのツボを用いて全身を調整していきます。
不眠症の症状別・原因別分類
<症状別分類>
不眠症は症状別に4種類に分類できます。
①入眠障害
寝付きの悪い状態。眠れない不安からそれ自体がストレスになり、さらに寝付きが悪くなる悪循環に陥りやすくなります。
②中途覚醒
睡眠の途中で何度も目が覚める状態。高齢者などで尿が近いために何度も起きる場合はそちらの問題を解決する必要があります。
③早朝覚醒
寝付きはよいが朝早く目が覚める状態。
④熟眠障害
十分に睡眠時間をとっていても眠りが浅く、熟睡感が得れらないもの。
<原因別分類>
原因別に分類した場合は、
①身体的要因
痛みやかゆみ、発熱、喘息発作などにより不眠をきたすもの。
②環境の問題
騒音や匂い、温度・湿度など睡眠環境としてふさわしくない生活環境
③心理的要因
ストレス、精神的ショック、仕事・生活上の不安など
④刺激物によるもの
カフェインやアルコール、たばこなど
<体質別分類>
その他に体質として、
①手足が冷えてのぼせやすいタイプ
②胃腸機能が虚弱で新陳代謝が落ち、全身が冷えやすいタイプ
③肩こりなどがあり常に緊張しているタイプ
などがあります。それぞれの症状・体質に合わせて対応していくことが必要となります。
睡眠とホルモン
睡眠を阻害するホルモンには覚醒作用のあるノルアドレナリンとかヒスタミンというものがあります。本来眠っているときは抑制されますが、それが放出され続けると頭が冴えて眠れなくなります。
反対に眠りを促すものはメラトニンというホルモンです。
通常人間は夜になると自然と眠れるようになっています。それは上記のホルモンが正しく分泌されることにより制御されています。
昼間活動する時間には覚醒作用のあるノルアドレナリンやヒスタミンなどが働き、交感神経が優位になっています。
夜になるとそれらのホルモンは抑制され、睡眠を促すメラトニンが放出され、副交感神経が優位になり眠りにつきます。
朝起きて活動し、夜はのんびりリラックスして過ごすという1日のリズムに則した生活を送ればこれらのホルモンはバランスよく働きますが、夜更かしをしたり昼まで寝ていたりすると生活リズムがくずれ、ホルモンのバランスもくずれていきます。
自分でできる不眠対策
①起きたら太陽の光を浴びる
実は人間の体内時計は24時間より少し長くなっています。朝太陽の光を浴びることにより、体内時計を正しい時間にリセットすることができます。
②昼間は適度に運動する
適度に疲労することにより眠りやすくなります。ただ疲れすぎると反対に眠りにくくなるのでやりすぎには注意しましょう。
③夕方以降は激しい運動はしない
夜に激しい運動をすると覚醒作用のあるノルアドレナリンが放出されたり、交感神経がたかぶるため目が冴えて眠りにくくなります。
④就寝前にパソコンや携帯電話の画面を見ない
パソコンや携帯電話の画面から放たれるブルーライトと呼ばれる光を浴びるとメラトニン(睡眠を促すホルモン)の分泌が減ってしまいます。
⑤風呂上がりから30分以上経ってから布団に入る
ひとは体温が下がってくると同時に眠気を感じるため、風呂上がりのポカポカした状態だと寝付きが悪いことがあります。
ただ冬場などで体が冷えすぎると逆に眠りにくくなるので気を付けてください。
⑥カフェイン(お茶、コーヒー、コーラ、チョコレートなど)を制限するか摂らないようにする
基本的には時間の流れに合わせた生活を送るようにしましょう。