肩こり、首の痛み、寝違え
腰痛と並んで首~肩周辺にかけてコリを感じる方も多く鍼灸治療を受けられます。そして腰痛と同じように様々な原因があるため、ただ単に肩に鍼をするよりも全身のバランスを整えたほうが圧倒的に効果があります。
以下によくある首~肩周辺の症状の簡単な施術の流れを説明します。
慢性的な肩コリ
肩まわりの筋肉は日常生活で腕をあげたりするだけでなく、肩からぶらさがった腕を常に支えているため、想像以上に負担がかかっています。そして肩まわりの筋肉が緊張して硬くなり、筋肉内の血管が圧迫されると血液の流れが悪くなります。
筋肉の血流が悪くなると、疲労物質がたまったり、新鮮な酸素や栄養が供給されなくなってしまいます。その状態が改善されないままでいると、さらに筋肉が硬くなって慢性的な肩こりになります。
はり治療には血管を拡張させて血液の流れを良くする作用があるため、肩まわりの筋肉の血流をよくして肩こりを改善することができます。
慢性の肩コリには仕事などで手をよく使う方、パソコンなどで目を使う方はもちろんそうですが、その他にも常に緊張しやすくリラックスできない方、胃腸の弱い方、冷え症の方などでも肩がこりやすくなります。
慢性的な肩コリの施術の場合、労働や目の使い過ぎなどの疲労が原因の場合はうつ伏せから開始し、ストレスや婦人科などのホルモンバランス、自律神経の乱れに原因のある場合は仰向けから施術を開始します。
<うつ伏せから始める場合>
疲労が原因の場合でも全身のバランスを整えることが重要なので、肩などの局所よりも先に背骨に沿って両側にある内臓の調子を整えるツボと手足にあるツボに施術し、しばらくそのままにします。
その後で肩周辺の筋肉を緩めてから仰向けでお腹と手足のツボに施術し全身のバランスを整えていきます。
<仰向けから始める場合>
内臓の不調やホルモンバランス、自律神経の乱れに原因のある場合は仰向けから施術を開始します。
仰向けからお腹と手足にある内臓とホルモンバランスを整えるツボに施術し、しばらくそのままにします。
次にうつ伏せで背骨に沿って両側にある内臓の調子を整えるツボに施術し、しばらくそのままにします。その後で肩周辺の筋肉を緩めていきます。
単純な疲労が原因の肩コリの場合は比較的少ない治療で効果が出ることが多いですが、ストレスやホルモンバランス、自律神経の乱れに原因のある場合は体質の改善をしていく必要があるため、よくなるまでに回数は多くかかりますが、2~3回の治療で効果は実感できます。
慢性的な肩コリは治療をしても仕事などをして疲れると再びコリを感じることが多いですが、鍼灸によって全身のバランスを整えていくにつれてコリの程度が少なくなっていきます。つまり肩コリになりにくい体質に改善するわけです。>
<日常生活で気を付けること>
猫背などの悪い姿勢では頭や腕の位置が前方にずれてしまい、より大きい負担が肩の筋肉にかかります。またスマートフォンを使う際に首が前に出てしまうと首から肩にかけての筋肉に負担がかかります。日頃から良い姿勢を意識するようにしてください。
また運動不足で筋肉の量が減ってしまうと、少ない筋肉で腕の重さを支えなければいけなくなるため肩こりの原因となります。肩周りの筋肉をきたえることで筋力がアップするだけでなく、血流も改善することができます。
首の痛み、手のしびれ(頸椎症、椎間板ヘルニアなど)
首の痛みには慢性的な肩コリと同様なものの他に交通事故などのムチウチによるものもあります。
また手にしびれや痛みを伴うものには頸椎の椎間板ヘルニアや頸椎の加齢による変形により、背骨から出ている神経を圧迫することによるものがあります。
痛みの緩和は早い内に効果が出てきますが、しびれに関しては時間がかかります。
また治療を継続していくうちに手の痛みが強くなる場合がありますが、これは感覚の鈍くなっていた神経が回復したために再び痛みを感じれるようになったためで、むしろ回復に向かっている段階なのでそこで治療を中断せずに継続するようにしてください。
施術の流れは疲労が原因のものやムチウチによるものは慢性的な肩コリの施術と似た流れになりますのでそちらを参考にしてください。
ここでは椎間板ヘルニアや頸椎症によるものについての流れを説明します。
うつ伏せになれる場合はうつ伏せで、うつ伏せがつらい場合は横向きなどの楽な姿勢で背骨の際にあるツボと手足にある背骨に関連のあるツボに施術し、しばらくそのままにします。
首~肩周辺の筋肉をゆるめた後で仰向けになりお腹と手足にあるツボに施術します。
寝違え
朝起きたら急に首が回らなくなることがあります。早めに来院していただければ1~2回で動けるまで回復できます。
仰向けなどの楽な姿勢でお腹と手足にあるツボを中心に施術し、しばらくそのままにします。
その後で痛みが軽減したのを確認してからうつ伏せができるようならうつ伏せで、つらいようなら横向きで背骨の両側にある内臓の調子を整えるツボに施術し、しばらくそのままにします。
胸郭出口症候群
胸郭とは胸骨・肋骨・胸椎から構成されるものです。その上部(出口)において腕に向かう大きな血管や神経が、骨と骨の間の狭い隙間や筋肉の間を通り抜けています。この部分で血管や神経が圧迫されることによって起こる一連の症状を胸郭出口症候群と呼んでいます。
症状としては首や肩のこり感、腕~手にかけて痛みやだるさ、しびれなどがあります。比較的若い女性に多く、体型としてはやせ型でなで肩のひとによく見られます。
胸郭出口症候群は神経や血管が圧迫される場所によってさらに細かく分類されます。
①斜角筋症候群
首の前側の付け根あたりで前・中斜角筋と呼ばれる二つの筋肉の隙間で神経や血管が圧迫されるもの。
②肋鎖症候群
第1肋骨と鎖骨との間で神経や血管が圧迫されるもの。
③過外転症候群
肩をあげたときに小胸筋(胸の奥にある筋肉)が緊張して神経や血管を圧迫するもの。
④頚肋症候群
第7頚椎横突起が生まれつき長いもの。
以上、圧迫される部位が違うだけで出現する症状は同じです。治療方法は圧迫の原因となっている筋肉をはりで刺激してほぐしていくと同時に、前述の肩こりの治療と同じように全身のバランスを整えていくはりをしていきます。骨が原因の場合は効果が出にくいことがあるので、その際は整形外科の受診をおすすめしています。